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    • 2024.02.01 Thu 17:04

    利他学会議:八丈島から 2-DAYオンラインカンファレンス

    利他学会議 八丈島から

    理工系大学のなかの人文社会系の研究拠点

    未来の人類研究センターは、2020年2月に、
    理工系大学のなかの人文社会系の研究拠点として創設されました。
    この4年間、「利他」をテーマにかかげ、理工系の最先端の研究や、
    さまざまな現場の知との交流を重ねながら、
    人間・社会・科学技術のあるべき姿をめぐって、研究をすすめてきました。

    毎年、研究成果を公開し、また「利他」について広く議論する場を設けるために、
    2日間のオンラインカンファレンス「利他学会議」を開催しています。

    今年度の「利他学会議vol.4」は、ちょっと特別。
    センターのメンバーが八丈島に移動し、海と空と森に囲まれた現地スタジオから配信します。

    センターと八丈島の関係が始まったのは2022年のこと。
    八丈島のチーズ職人・魚谷孝之さんが、センターのサイトから連絡をくれたのでした。
    近世以降、多くの流人たちを受け入れてきた八丈島は「情の島」と呼ばれています。
    この「情」は「利他」と関係があるのではないか、というのがその内容でした。

    その後、地元の方を交えて利他研究会@八丈島を開催してもらったり、
    今回スタジオとして使用させていただく施設で2泊3日の研究合宿を行ったり、
    少しずつ関係を深めていきました。
    そして今年は満を持して現地からの配信。
    まだまだ知らないことばかりですが、
    この土地の自然と歴史に敬意を表しつつ、
    ここでしか生まれない議論に身を委ねてみたいと思います。

    イベントはテーマごとに4つの分科会から構成されます。
    分科会によっては、センターのメンバーだけでなく八丈島の方や
    理工系研究者など外部ゲストも出演します。
    さらに各分科会のあとには、
    分科会に参加しなかったセンターのメンバーが語り合う「ちゃぶ台トーク」が続きます。
    天候が許せば、夜には「焚き火トーク」も。
    最後にはどんな利他の風景が見えてくるのでしょうか。
    対話や雑談のなかから生まれる触発のライブ感を、お楽しみください。

    *人間の計画は自然には逆らえません。天候などやむを得ない事情によって予定が大幅に変更になる可能性があります。
    変更が生じた場合には、ウェビナー登録時のメールアドレスに連絡いたします。


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    2023.3.2(土)-3(日)

    対象:一般、本学教職員、学生
    定員:2,800名(各分科会ごと)
    開催形式:ウェビナーによるオンライン開催(要事前登録)
    参加費:無料(要事前申込み)
    主催:東京工業大学 科学技術創成研究院 未来の人類研究センター

     

    参加方法

    ウェビナー視聴方法:利他学会議中に開催される4つの分科会+ちゃぶ台トークのうち、視聴ご希望のセッションごとにお申し込みいただく必要があります。下記の各セッションに記載されているリンクからウェビナー登録画面に飛び、必要事項を記入してお申し込みください。

    ●セッション1 3月2日(土)10:00-12:00
    11:30-12:00 ちゃぶ台トーク

    ▶︎セッション1のお申し込みはコチラから:
     分科会1+ちゃぶ台トーク ウェビナー登録

     

    ●セッション2 3月2日(土)13:30-15:30
    15:00-15:30 ちゃぶ台トーク

    ▶︎セッション2のお申し込みはコチラから:
     分科会2+ちゃぶ台トーク ウェビナー登録

     

    ●セッション3 3月3日(日)10:00-12:00
    11:30-12:00 ちゃぶ台トーク

    ▶︎セッション3のお申し込みはコチラから:
     分科会3+ちゃぶ台トーク ウェビナー登録

     

    ●セッション4 3月3日(日)13:30-15:30
    15:00-15:30 ちゃぶ台トーク

    ▶︎セッション4のお申し込みはコチラから:
     分科会4+ちゃぶ台トーク ウェビナー登録

     

    すべての分科会とちゃぶ台トークに、未来の人類研究センターのメンバーが登壇します。
    *「ちゃぶ台トーク」・・・分科会に参加しなかったメンバーが分科会終了後に繰り広げる雑談トーク。分科会の議論によって活性化された頭の中身を互いにぶつけあいます。

     

    ●エクスカーション 3月3日(日)20:00-21:30
    ▶︎エクスカーションのお申し込みはコチラから:
     エクスカーション ウェビナー登録

     

    申込〆切:2022年3月1日(金)※先着順

     


    スケジュール

    分科会1八丈島の方たちと

    3/2(土) 10:00-11:30

    ひょっこりひょうたん島のモデルにもなった八丈島。植物や動物が山の中で起こしている循環とは?近世の流人たちは島でどんな暮らしをしていたのか?現在の移住者と島民の関係は?島の自然や歴史から見えてくる「利他」について考えます。

    Guest

    • 魚谷 孝之さん

      チーズ職人

      1982年山口県生まれ、神奈川県育ち。東京諸島唯一のチーズ職人。 大学・大学院での牛乳の研究から一転し、千葉の新規事業でミルク工房とカフェを立ち上げた経験を経て、東日本大震災を経験。石巻での復興支援後、放射能の研究所で働く。在職中の夏休みに訪れた八丈島に魅せられて半年後移住。八丈島乳製品のブランド再構築に没頭。島の文化と伝統を守りながら、現代版にアップデートし、島の未来に貢献することを使命とし、離島振興を推進している。八丈島には無限の可能性があり、未来を共有・共感し創り上げることが重要だと信じている。11年目を迎え、島の魅力や課題を引き続き発信している。

    • 魚谷 孝之さん
    • 山下 木苺あびさん

      八丈島高校1年生

      2007年東京都八丈島生まれ。八丈高校に在籍する高校1年生です。八丈島の方言で、木苺とかいて"あび"と読みます。歌うたってます。 今回は分科会1にて、共同体と「まろうど」(流人や観光客)という観点から八丈島の今後について論じます。 それとともに地域教育の問題についてもお話しできたらと思っています。 ほかにも美学、芸術史(特に音楽)などにも関心があります。

    • 山下 木苺さん

    分科会2利他をつくる/つくるの中の利他

    3/2(土) 13:30-15:00

    利他のないものづくりは危険だ。でも意図してつくると利他は押し付けになる。未来の人類研究センターの最初の2年間の活動をまとめた本をめぐって、新旧センター関係者が語り合います。

    Guest

    • 中島 岳志さん

      東京工業大学 リベラルアーツ研究教育院 教授

      1975年、大阪生まれ。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了。学術博士(地域研究)。2005年『中村屋のボース』で、大仏次郎論壇賞、アジア太平洋賞大賞を受賞。北海道大学大学院准教授経て、現在、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。著書に『ナショナリズムと宗教』、『秋葉原事件』、『「リベラル保守」宣言』、『血盟団事件』、『岩波茂雄』、『アジア主義』、『親鸞と日本主義』、『保守と立憲』、『超国家主義』『自民党』などがある。

    • 中島 岳志さん
    • 北村 匡平さん

      東京工業大学 リベラルアーツ研究教育院 准教授

      1982年、山口県生まれ。映画研究者/批評家。専門は映像文化論、メディア論。著書に『椎名林檎論——乱調の音楽』『アクター・ジェンダー・イメージズ——転覆の身振り』『24フレームの映画学——映像表現を解体する』『美と破壊の女優 京マチ子』『スター女優の文化社会学——戦後日本が欲望した聖女と魔女』、共著に『彼女たちのまなざし——日本映画の女性作家』がある。

    • 北村 匡平さん
    • 塚本 由晴さん

      アトリエ・ワン/小さな地球理事/東京工業大学 環境・社会理工学院 教授

      1965年神奈川生まれ。1987年東京工業大学工学部建築学科卒業。1987 ~88年パリ・ベルビル建築大学。1994年東京工業大学大学院博士課程単位取得退学。1992年貝島桃代とアトリエ・ワンの活動を始め、建築、公共空間、家具の設計、フィールドサーベイ、教育、美術展への出展、展覧会キュレーション、執筆など幅広い活動を展開。「ふるまい学」による建築デザインのエコロジカルな転回を通して、建築を産業の側から人々や地域の側に引き戻そうとしている。

    • 塚本 由晴さん

    分科会3生物と非生物のケア

    3/3(日) 10:00-11:30

    哺乳類の子と親の関係、そしてロボットとオーナーの関係。ときに苛立つこともあるけど、思い通りにならない他者だからこそ、一緒にいることができるのかもしれない。ケアについて考えます。

    Guest

    • 黒田 公美さん

      東京工業大学 生命理工学院 教授

      1970年生、専門は親子関係など親和的な社会性の神経科学。1992年京大理、1997年阪大医卒。精神科研修医、McGill大ポスドク、理化学研究所を経て現職。子育てに必要な神経細胞をネズミとマーモセット(サル)で研究。また人間やネズミの親が子を運ぶと子が大人しくなる「輸送反応」を2013年に発見し、夜泣き対策に役立てるウェアラブルを開発中。子育て支援の文理融合研究にも携わる(『子ども虐待を防ぐ養育者支援』2022 岩崎学術出版)。利他行動は動物にもありますが、その進化的起源は●●と考えられています…。

    • 黒田 公美さん
    • 林 要さん

      GROOVE X 創業者・CEO

      1973年、愛知県生まれ。1998年、トヨタ自動車株式会社に入社。スーパーカー「LFA」やF1の空力(エアロダイナミクス)開発に携わった後、トヨタ自動車製品企画部(Z)にて量産車開発マネジメントを担当。2011年、孫正義後継者育成プログラム「ソフトバンクアカデミア」に外部第一期生として参加し、翌年ソフトバンク株式会社に入社。 感情認識パーソナルロボット「Pepper」の開発に参画。 2015年、GROOVE X株式会社を創業。2018年、家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」を発表。2019年、出荷を開始。ラスベガスで開催されている世界最大規模の家電見本市 「CES」において、2019年にThe VERGE「BEST ROBOT」、2020年には「イノベーションアワード」など受賞多数。著書に「温かいテクノロジー」、「ゼロイチ」がある。

    • 林 要さん

    分科会4コモンズとしての雲

    3/3(日) 13:30-15:00

    2023年4月からセンター内で始動した水プロジェクト。水の中でも「雲」に注目し、「雲を自在に水にすることができるようになったら」という架空の設定のもと、未来における新たな資源の登場が国際関係や人々の健康にどのような影響を与えるか、議論しています。彼らが共同研究の手段として取り組んでいるのが、「ゲームを作る」という作業。完成はまだ先になりそうですが、その途中経過や過程で見えてきた発見について、普段の議論の様子そのままにお伝えします。

    • 水プロジェクトメンバー

      山本貴光/川名晋史/髙橋将記
      RA 山本洵哉(環境・社会理工学院M1)
    • 水プロジェクトメンバー

    エクスカーション焚き火トーク

    3/3(日) 20:00-21:30

    お天気が許せば、焚き火をかこんでふりかえり&さらなる展開にむけて語りあいます。森・空・海につつまれて過ごした2日間。八丈島の夜は長い・・・


     

     

    未来の人類研究センターメンバー

    • 伊藤 亜紗

      教授、芸術、センター長

      2年前に八丈島での利他研究会に参加させていただいたとき、地元の方が口々に「あの人がこうだった」「この人はこうだ」と身近な人の話をし始め、「利他って結局「一員である」ということではないか」という結論に達しました。利他についてはあちこちでお話させていただきましたが、こんなに「話が早い」場所は他になく、びっくりしたことを覚えています。私はまだ「八丈学」のほんの入り口しか知りませんが、この土地で利他学会議を開催できる幸せを噛み締めつつ、その自然や歴史をさらに学びたいと思っています。夏の合宿にひきつづき素敵な会場を提供してくださったIsland and officeのみなさんに、この場を借りて感謝申し上げます。

    • 伊藤 亜紗

    利他プロジェクトメンバー

    • 多久和 理実

      講師、科学史、利他プロジェクトリーダー

      未来の人類研究センターの一員に加わって2年が経ちました。この2年間、将来歴史を構成するような記録を未来に残す活動の利他性について考えてきました。その中で、利他が生じそうな場において「未来をコントロールしようとする欲望」が想像していた以上に強いことに気付きました。「先回りして目標を定めておかないと不安になる」とも言えるかもしれません。そのような欲望や不安を手放して、利他学会議においても、思いがけず発生する対話やその空間を楽しみたいと思います。

    • 多久和 理実
    • ヒュー・デフェランティ

      教授、音楽学、日本音楽史

      ... writes about music, primarily as manifested in “Japan”, past and present, and among the “Japanese” historical diaspora in Australia.  At the FHRC this year he has addressed music as a medium for connection and disconnection, communality and solitude. His work with Kyushu biwa singers, investigation of music among interwar Hanshin region ethnic minorities, and group-based research on music-making of diverse minorities in Tokyo as well as prewar emigrants from Japan all point toward the fundamentally "preservational” functions of music as a tool for social cohesion and conviviality, manifesting rita under particular conditions. Conversely he recognises “anti-rita” potentiality in essentialist claims about folk or traditional music and ethnic distinctiveness, which often underlie deployment of music for excluding and oppressing those regarded as ethnically or culturally "Other".

    • ヒュー・デフェランティ
      • 河村 彩

        准教授、ロシア文化、近現代美術、表象文化論

        私は美術やデザインを専門に研究していますが、これらは利他と深いつながりがあるとつくづく感じます。デザインは使う人や制作物を取り巻く環境を第一に考えて行われる行為です。一方芸術制作は、作家の自己表現という利己的行為に見えますが、芸術作品は見る人に心地良さを与え、ときには人生を変えてしまうような強い影響を及ぼします。つまりデザインにも芸術にもそれぞれ異なった利他が存在します。そして両者に共通するのは、必ず受け取る他者がいること、そして物によって利他が媒介されるということです。利他学会議ではみなさんと一緒に身の回りにある多様な利他を具体的に考えてみたいです。

      • 河村 彩

    水プロジェクトメンバー

    • 山本 貴光

      教授、学術史・ゲーム学、水プロジェクトリーダー

      いまさらながら人生ではじめて水や雲について真剣に考えているかもしれません。というのは、未来の人類研究センターでメンバーのみなさんと「水プロジェクト」に取り組んでいるところなのです。利他という観点から水について考える――この課題をもう一ひねりして、「もし人間が雲を操作できる技術を手にしたら、生活や社会や自然にどんな変化が起きるだろう」という問いを巡ってああでもないこうでもないと議論しています。どこか捉えどころのない雲と人間や社会の関係をよく眺めるためには、諸学術の知見を集めて活用する必要がありそうです。利他学会議では、そんな試行錯誤の一端をお目にかけます。みなさんもご一緒に分からなさを楽しんでいただけたら幸いです。

    • 山本 貴光
    • 川名 晋史

      教授、国際政治学、安全保障論

      専門分野の特性上、「利他」という概念には慎重な態度をとっています。むしろ利己的な個人からなる集団がいかにして他者や他の集団の利益に関心をもつことができるのか、ということのほうに関心があります。その意味では、私は利他ではなく、利民(りたみ)のほうに関心があるのでしょう。もちろんこれは造語で、言葉遊びですが、「りた」と「りたみ」。「み」が加わることで、利他の概念はどのように変化するでしょうか。利民のほうは、自らを含めた市民(civil)全体の利益を考えるということですから、やはり狭義の利他とは意味するものが違いそうです。このような逡巡を覚えつつ、メタファーとしての水や雲の問題を考えてみたいと思います。

    • 川名 晋史
    • 髙橋 将記

      准教授、時間栄養学、個別化栄養学

      未来の人類研究センターにて、水プロジェクトに参画しています。「水」は、私の専門である栄養学とも深く関係しておりますが、センターでは普段とは異なる観点から「水」について考えています。例えば、私たちが空を見上げた時に目にする「雲」に着目し、雲と健康・ウェルビーイングとの関係、また雨の降ってきた場所に存在する食物や植物に対する影響など多面的な観点から人文・社会科学系の研究者と日々議論しています。利他学会議では、これまでの水プロジェクトで取り組んできたことの概要を紹介しつつ、異なる専門分野での取り組みの楽しさや難しさなどを参加者の皆さんと共有できればと思います。

    • 髙橋 将記