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    • 2021.01.13 Wed 09:56

    未来の人類研究センターに、高知から共に利他を研究する新メンバーが参加!

    2021年から、未来の人類研究センターでともに利他を研究してくれる新しいメンバーが加わることになりました。東京工業大学の卒業生でもあり、現在は高知県の津野町で地域おこし協力隊として活動している蛭田彩人さんです。

    高知の山の中から考える利他

    「手触りの輪郭をお届けします。」
    2021年から未来の人類研究センター協力研究員を務めさせていただきます、蛭田彩人と申します。2016年に東京工業大学第2類(現在の物質理工学院材料系)に入学し、金属材料工学を学んできました。4年生では、未来の人類研究センターのセンター長である伊藤亜紗先生のもとで「当事者研究」について研究しました。また、四大学連合の制度を利用して一橋大学商学部経営学科江川ゼミにて経営も学びました。その後東京工業大学を卒業して新卒で、高知県津野町という四万十川の源流点を有する町へ地域おこし協力隊として着任しました。この町では、地域活性化をミッションとして活動しています。地域に入り、地域を学び、地域を活かすことに取り組む姿勢を買っていただけたことと思います。精一杯頑張っていきたいと思います…

    というのが「現在」の私の「切り取られ方」です。しかし、それは切り取られた「蛭田彩人」であり、この単一な時間軸で切られたシャッターには「意図」を包含させることができません。私の「意図」を少し補足させてください。

    「おまんはまっことたすこいにゃあ(おまえは本当に弱いなあ)」

    高知県の山奥で地域のおじさま方にこのように言われながら農作業をする日もあります(とても仲良しのおじさまからの愛のこもった言葉です)。その瞬間にシャッターを切るならば「東工大を出た若者が肉体労働をしている」それだけになってしまいますが、そうではありません。


    「東工大生」のような、地域のおじさまからすると非常に異質な人間が「地域の住民」になるためには、ともにその土地の土を耕し育て恵みを頂くことが必要不可欠です。そして、それは「東工大生」が最も苦手とすることの一つでもあると思います。「地域の住民」になったところで、どんな世界が見えるか分からないし、そこに旨味は少ないでしょう。計算/想定できないものになることは、我々には痛みをもたらします。


    しかし、「想定できないもの」に変身しないと見えない「暮らし」があります。外から眺めていると「なぜあんな不合理なことをしているんだろう」と思うことでも、当事者の中ではある一定の合理性があります。それが「その土地(人)ならでは」であり、そこに文化が宿ると私は考えます。そのフラジャイルな部分を壊さないよう、丁寧に触れながら輪郭を掴み、カタチにすることを私は大切にします。

    そのための環境を未来の人類研究センターに与えていただけるとのことで、「ようやくこの時が来た」と感じています。利他研究会@高知の開催や、自然に沿った高知独特の文化から抽出されるエッセンスを詰め込んだものづくりなど、高知だからできることを大切に活動していきます。


    協力研究員のお話は、私にとって全くの想定外でした。しかし、お話をいただいたあとは「待ってました」の感覚です。因果の外側から、新鮮な「輪郭」をお届けします。

    蛭田彩人

    写真 嶋祐也 撮影